大阪市立自然史博物館の特別展「昆虫」を見てきた。とてもためになったので記録を残しておく。
概要
- 場所: 長居公園内の大阪市立自然史博物館
- 期間: 2019/07/13 (土) - 2019/09/29 (日)
- 時間: 09:30 - 17:00
- 料金
- 大人: \1400
- 高大生: \800
- 中学生以下: \0
- URL
展示を見てきた記録
写真 には昆虫の画像が含まれるので、閲覧はお好みでどうぞ。
会場に入ると、まずは、ミツバチ、オオムラサキ、ミンミンゼミ、オオクワガタ、の巨大模型が出迎えてくれる。かなり精巧に作られているようで普段は小さくて見えないような細部まで観察できる。ここにはカメラが設置されており、入場時に渡されるハガキ大の紙に印刷された QR コードを読み取り機にかざすことで、これらの巨大昆虫の模型を背景にして記念撮影を行える。撮った写真は会場出口の自販機で、プリントもしくはデータで入手できる。
昆虫の定義 (体が頭部、胸部、腹部の三つに分かれている、三対六本の脚が胸部から生えている、二対四枚の翅がある、など) は知っていたし、ダンゴムシや蜘蛛やサソリが昆虫でないことも知っていたので、最初の方は特に驚きはなかったが、徐々に細かい話が出てきて知らないことが多くなりとても面白かった。昆虫の食事方法は、噛む (カマキリなど)、吸う (蝶など)、舐める (カブトムシなど) の三種類であること。昆虫が飛ぶ際には翅を単に上下に動かすだけではなく、前後に動かしたりひねりを加えたりして、進路を変えたりホバリングしたりといった微妙な動きを実現していること。カブトムシの角は、非常に軽いにもかかわらず子供の手では折れないほど強靭で、その構造が研究対象になっていること。昆虫の変態は、無変態、不完全変態、完全変態の三種類あること。
蝶と蛾の違いについては、厳密に区別する方法があるように書いてあったが詳細はわからなかった。むかし言われていた、止まったときに翅を閉じるのが蝶で、翅を開くのが蛾である、というのにも例外がある。色の鮮やかさについては、繁殖の観点で鱗翅目が昼行性か夜行性かによって分かれるとのこと。昼行性の場合は目立つ必要があるので色が鮮やかになる傾向があり、夜行性の場合はその必要がないので地味な色になる傾向とのこと。
擬態についても種類があり、名前がついていた。毒などの危険な能力を持つもの同士がお互いに姿を似せることをミュラー型擬態といい、無害な昆虫が危険な能力を持つ昆虫に姿を似せることをベイツ型擬態という。ミュラー型の方も擬態として識別されていて、名前がついているのは知らなかった。
以前に国立科学博物館で開催されたときに話題になったらしい G の部屋もあった。こちらは生体展示で、以前と同じく、ハテナゴキブリ、ヒカリモンゴキブリ、マダガスカルゴキブリ、の三種だった。見てくれも日本にいるのと違うし、カサカサ素早く動くわけでもないので、予備知識なしで見せたら他の昆虫と変わらないのではなかろうか。なお、最近の研究ではシロアリはゴキブリ目に含まれるとのこと。シロアリは家の木材を食害するし、ゴキブリは不快害虫とみなされているし、ゴキブリ目は人間の観点では散々な扱いだが、自然の観点では、倒木などを食べて土に返すという重要な役割を担っており、欠くことのできない昆虫であるとのこと。見直した。
会場には標本が大量に展示されており、日本で採取されたものは概ね馴染みがあり、子供の頃を思い出して懐しかった。沖縄になると見慣れないものが結構あり、海外特にアマゾンは巨大なものが多くあり威圧感があった。これほど多様な姿形にもかかわらず、共通点を見つけて抽象化して、整然と分類する人類はすごい。
標本の作り方についても展示があり、各種の道具と工程が説明されていた。捕まえた昆虫を殺すところと胴体にピンを刺すところは、抵抗感があって出来そうにない。昆虫を捕まえて飼育して研究するのはいいけれども、標本を作るのは誰かにお願いするしかない。
展示の最後の方は昆虫の産業への応用で、蚕は知っているので特に目新しさはなかったが、構造色が不思議だった。構造色の例として青く輝くモルフォチョウが展示されていた。顔料などによる発色と異なり、構造色は紫外線による褪色が起きないので工業製品などへの応用があるとのこと。昆虫 (に限らず動植物) は長年かけて厳しい環境を生き抜いて最適化してきたので、そこで実現されている技術を調べることで得られることは多そうだ。
会場には中高生と思しき男子生徒が何人かいて、割と熱心に展示を見ていた。会話の内容に「キモい」が含まれていて、語彙力とあわせて残念な感じはしたが、顔をかなり近付けて見たり、説明文を熱心に読んだりしている様子も見受けられた。来場した子供の何人かが昆虫を含めて自然科学に興味を持ってくれれば良いなと思う。そういう意味では大人の料金をもう少し上げて、高大生も無料にすれば良い。
展示はそれほど多くはないので、全て見て回るのに 1-2 時間みておけば十分だと思う。
昆虫の生態を調べたり、特徴的な器官が何に使われているのかを調べたり、といった研究はやっぱり面白そうだったので、職業の選択を間違えたかなという気がした。