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剰余の同値関係に演算を導入する

Contents

  • 剰余の同値関係に演算を導入する
    • 記号の準備
    • 演算の導入
      • 加法の確認
      • 乗法の確認
    • まとめ

ここまでの議論は

  • 同値関係

を参照してください。

記号の準備

整数環 \(\mathbb{Z}\) とその \(0\) でない元 \(n \in \mathbb{Z}\) を一つ取る。同値関係を \(a, b \in \mathbb{Z}\) に対して \( a \equiv b \mod n\) と定めると、同値類は全部で \(n\) 個あり

$$C(0), C(1), \ldots, C(n-1)$$

であるが、簡単のため

$$\overline{0}, \overline{1}, \ldots, \overline{n-1}$$

と書くことにする。

また商集合を

$$\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}$$

と書くことにする。

演算の導入

この同値類の間にも整数と同様の自然な演算が定義できると望ましい。例えば \(n = 7\) としたときに \(9, 16 \in \overline{2}\) と \(3, 17 \in \overline{3}\) に対して

$$9 + 3 = 12 \equiv 5 \mod 7$$
$$16 + 17 = 33 \equiv 5 \mod 7$$

と同値類のどの元に対してもうまく演算できるように見える。このことを代表元のとり方によらない、という。

加法の確認

\(\overline{p}, \overline{q} \in \mathbb{Z}/n\mathbb{Z}\) に対して、加法 \(+\) を

$$\overline{p} + \overline{q} = \overline{p + q}$$

と定める。このとき加法が代表元のとり方によらないことを示す。

任意の \(a \in \overline{p}, b \in \overline{q}\) に対して \(a = r \times n + p, b = s \times n + q\) となる \(r, s \in \mathbb{Z}\) が存在する。

$$a + b = r \times n + p + s \times n + q = (r + s) \times n + p + q \equiv p + q \mod n$$

より代表元のとり方によらないことがわかった。

\(\overline{p}\) に対して \(\overline{-p}\) は加法に関する逆元となる。証明は容易なので省略する。

乗法の確認

\(\overline{p}, \overline{q} \in \mathbb{Z}/n\mathbb{Z}\) に対して、乗法 \(\times\) を

$$\overline{p} \times \overline{q} = \overline{p \times q}$$

と定める。このとき乗法が代表元のとり方によらないことを示す。

任意の \(a \in \overline{p}, b \in \overline{q}\) に対して \(a = r \times n + p, b = s \times n + q\) となる \(r, s \in \mathbb{Z}\) が存在する。

$$a \times b = (r \times n + p) \times (s \times n + q) = (r \times s \times n + r \times q + s \times p) \times n + p \times q \equiv p \times q \mod n$$

より代表元のとり方によらないことがわかった。

まとめ

ここまでで剰余の同値関係に関して、同値類の間に自然な演算を定義でき、この演算が安全であることを確認した。割り算に関しては次回に取り扱う。

なお \(\mathbb{Z}/n\mathbb{Z}\) はここで定義した加法と乗法に関して環をなす。


Published

Aug 12, 2019

剰余計算

  • Part 1: 同値関係
  • Part 2: 剰余の同値関係に演算を導入する
  • Part 3: 剰余の同値関係で乗法の逆元を考える
  • Part 4: オイラーの定理とフェルマーの小定理

Category

Mathematics

Tags

  • Residual 4

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